『創造力は眠っているだけだ』

『創造力は眠っているだけだ 人生を充実させる「8つのレッスン」』(ヤロン・ヘルマン著)を読みました。

著者は将来のイスラエル代表バスケットボール選手として期待されていたが16歳で大怪我により断念。そこからピアノを始めてプロのジャズピアニストになったという人物。

16歳でピアノを始めた頃はまったくの初心者で、そこからプロになるために著者が経験したことを元に、自分の中にある創造性をいかに発見し育てるか的なことが書かれてるといった感じでしょうか。

なお、ピアノに限定しているわけではなく、創造力全般というか自分のやりたいことをどう実現するかという内容になってます。

私としては特になにか創造力で人生を充実させようと思ってるわけではなく、ピアニストが書いた本ということで自分のピアノ練習に何かヒントになることがあればと。

ただまあ正直なところを言うと、いろいろな既知の知見をまとめたものという印象で、とくに目新しいことはなく、終盤はちょっと疲れて斜め読みしてしまいました。

もちろん、それが実行できているかというとそうではないわけで、大切なのは実践であるということはこの本でもしつこいくらい書かれてますけど。

この本で最も影響を受けたのは下記の部分。

僕はそれまで、ピアノを習ってるまじめな生徒なら誰でもやるように、鍵盤をじっと見つめたまま練習していました。絡まり合いながら行き来する指たちを見つめ、目で彼らに指示を出そうと躍起になっていたのです。

指たちを監督するのにうんざりした僕は、視線を鍵盤から外し、ピアノの向こうに広がる地平線を眺めるかのように、真正面を見据えて弾き始めました。すると驚いたことに、僕の両手は我を忘れて、いや「僕のこと」を忘れて、勝手に練習曲を弾き始めたのです……。なんと不思議な感覚でしょう!指たちは僕のコントロールを離れた状態で動いていました。激しい潮の流れに呑み込まれたような感覚。視線の向きや、視線の置き場を(この時は文字通りの意味で)変えると、新たな「視界」が広がったのです。

ピアノの鍵盤を見つめる代わりに、遥か向こうに視線を向ける。何も「見て」いなかった瞬間、僕の意識は切り替わっていました。機械的な反復から抜け出し、空想に浸っていたのです。そして……いえ、この時はそれだけでした。数秒が永遠のように感じられました。

それは、僕が初めて「創造的な陶酔」の境地を垣間見た日でした。取り組んでいたのは「芸術的な」訓練ではなk、初心者向けの練習曲です。しかし、それが異次元の体験を与えてくれました。僕は重要な気づきを得ました。すばらしい「創造的な陶酔」の境地はどんなレベルの人でも、初心ん者であっても到達できる、と。

太字は原文にあったものです。

創造の鍵のひとつとして視点を変えることについて書かれた一節ですが、先日の自分のピアノ練習の記事でも書いてた手元を見ないで弾くことのきっかけになってます。

私の場合「指が勝手に弾く」や「創造的な陶酔」とまではいかないものの、手元を見ないで弾くことによる快感を得ることがあり、以降できるだけ手元を見ないで弾く試みを続けてます。

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