『人生にとって意味のある勉強法』陰山英男著(PHP新書929)を読みました。
陰山メソッド
著者の陰山英男さんは、「百ます計算」や「陰山メソッド」などの教育現場で有名になり、現在では大阪府教育委員会会長、立命館小学校校長顧問なども努めつつ、「陰山手帳」や自ら作詞、作曲した音楽をiTunesから配信するという精力的な50代後半(本稿執筆時点)の方のようです。
文科省や内閣官房関係でも
著者はわたしと10年も離れていない(著者が年上です)うえに自身の主たる活動フィールドを小学校しとしていることを考えると、わたし自身が彼のメソッドの影響を受けることはないわけで、その教育現場の実態はわたしは想像するしかないわけですが、文部科学省の中央教育審議会や内閣官房の教育再生会議の委員なども務められたことを考えると、少なくともある一定以上の実績を重ねてこられた方なのであることが想像されます。
すべての知性は実用性がともなわないと本物にならない
本書で著者は、”大人は「自分にとって必要なこと」を学べばいい”と説きます。仕事をこなしながら新しいことを学ぶためには「自分にとって必要なこと」が大事であり、「何でもいいから勉強すれば、もしかしたらいいことがあるかもしれない」と考えて安易に学生時代の学びなおしのようなことをすることに対して異議を唱えています。
そこには「すべての知性は実用性がともなわないと本物にならない」という著者の考えがあります。つまり自分がその知識を得て何をしようとするのか、あるいは、その知識がないと困るような状況がなければ、そこに本当の知性を得ることができないのではないかということです。
つまり、何か必要にせまられたわけでなく、なんとなく「英会話ができたほうがいいんじゃないか」といった動機レベルで勉強しても身につかないんじゃないのかと。
どのような人生を送りたいか
とまあ、ある意味、校長先生の訓示のような感じではありますが、わたしが本書で共感を覚えたのは、
人に与えられた時間は無限ではありません。残された時間はどんどん減り、一生のうちにできることは限られてきます。
という一節でしょうか。
わたし自身が40代でリタイアした理由のひとつが上記の言葉のなかに含まれているように思います。この短い言葉のなかには、「なんのために生きるのか」「なんのために働くのか」「このさきどうしていきたいのか」といったことなど、人生に迷ったときに立ち止まって改めて考えることの意義が含まれていると思います。
そういったことを考えるときに、どうしても必要になるのがお金についての考え方ですが、その点に関しても、本書の別の箇所でも、
お金の使い方や稼ぎ方、殖やし方は、『どのような人生を送りたいか』という問題につながる
などと触れられており、これはわたしがリタイア前にとくに考えたことに重なります。
運命の向こう側
本書を『人生にとって意味のある勉強法』の題名どおりのノウハウ本として本書に接すると、そこに具体的な答えはないかもしれません。しかし、著者が記すところの「運命の向こう側」に行くための考え方が得られる書としてとらえると、いろいろと考えされるところのある本であると思います。
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