わたしは毎日NHKの朝ドラ「ひよっこ」を見ています。
もともとあまり朝ドラに興味がないのですが、ひところ話題になった「あまちゃん」は細部にいろんな要素が散りばめられていて、さすが宮藤官九郎という感じで毎日楽しみに見ていました。
「ひよっこ」は「あまちゃん」ほどではないにせよ、似たようなにおいを少し感じます。
ただならぬ存在感
そのにおいの筆頭が峯田和伸さんです。
わたしはこの方をこの朝ドラを見るまで知りませんでした。しかし、最初に登場したときから強烈なインパクトを放っていました。
このドラマで、主人公を取り巻く若手以外の主要な俳優で知らなかったのは、この人くらいかもしれません。にもかかわらず、その存在感はかなりのものでした。
なんというか、古谷一行さんや沢村一樹さん、佐々木蔵之介さんといった、俳優が本業の方々を凌ぐような存在感でした。
それはその役柄の特殊性をすごく自然に演じていることに尽きるのではないかと思います。
彼の演じている小祝宗男という人物は、このドラマの中では非常に特殊な役柄だと思います。
いちばん変な奴といってもいいかもしれません。「あまちゃん」でいうところの、古田新太さんやピエール瀧さんの演じた役のような。
その役を俳優を本業としていない彼が、まったく不自然に感じさせることなくナチュラルに演じているその姿は「この人はいったい何者?」と思うに十分でした。
銀杏BOYZ
そこでちょっと調べてみたら、彼は銀杏BOYZというパンクロックバンドのメンバーであることを知りました。
銀杏BOYZなら聞いたことがあります。といっても名前を聞いたことがあるだけで曲は聴いたことがなかったと思います。
彼らがメインで活動していた2000年代は、わたしはまだ30代半ばでまだロック関連の雑誌をちょっと読んだりしていたので名前は見かけたことがあったのだと思います。
で、今回YouTubeで銀杏BOYZを聴いてみると、
う~む、素敵です。露骨だけどピュア、ちょっとえげつなくシニカル、ひところのTheピーズを思い起こします。
ちなみに、こちらの映像などを見ると、
THE BEATLESのジョン・レノンやジョージ・ハリスンが使っていたリッケンバッカーのギターを使っています。銀杏BOYZの前のバンドGOING STEADYの映像でもリッケンバッカーを使っているところを見ると、ジョンやジョージをリスペクトしているのかもしれません。
また、いろんな動画を見ていると、自身の故郷である山形弁と思しきイントネーションで堂々と話している場面もあります。
そう考えると、今回の朝ドラの小祝宗男という、THE BEATLESを敬愛する茨城県の農村で生まれ育った中年男という役は、彼にぴったりだったのかもしれません(茨城県と山形県の方言は違うとは思いますが方言を堂々と口にして違和感のない存在という意味で)。
出演作に想うサブカル感と親近感
あと、彼について調べている過程で、とても親近感を感じる発見がありました。
彼はいままで映画で、
(原作:みうらじゅん、脚本:宮藤官九郎)
グミ・チョコレート・パイン
(原作:大槻ケンヂ、監督・脚本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)
色即ぜねれいしょん
(原作:みうらじゅん、監督:田口トモロヲ)
に出演しています。
まず、原作がみうらじゅんさんと大槻ケンヂさんという、わたしの敬愛するサブカルチャー系アーティストです。
ケラリーノ・サンドロヴィッチさんは、大槻ケンヂさんの「筋肉少女帯」も所属していたことのあるインディーズレーベル「ナゴムレコード」を主宰していた人で、自らも「有頂天」というサブカル色満載のバンドも率いていました。
田口トモロヲさんは、いまでこそNHKの「プロジェクトX」のナレーターなどで有名な人ですが、その昔はパンクロックバンド「ばちかぶり」を率いていた人です。
また「色即ぜねれいしょん」の音楽担当は「あまちゃん」の大友良英さんだったりもします。
なんだかそんなことを考えつつ、自分が中学生の頃いちばん好きなバンドがTHE BEATLESだったことなんかを思うと、いまわたしがこの朝ドラを見ているのは偶然じゃないような気さえしている今日この頃です。
思うに、峯田和伸さんは音楽に留まらないサブカルネイティブな人で、親(または真)サブカル的な役を演じるにはすごく適しているのかもしれません。
過去にライブでいろいろ問題を起こしてきたことでも有名なよう(その行動の理由は定かではありませんが、それ自体がプリミティブな表現のようにも感じなくもない)ですが、一方で、文化庁芸術祭賞を受賞したNHKのドラマ「奇跡の人」で主演を演じたりするなど、そのポテンシャルは一般の俳優の方々とは違うところにあるような気がします。